日本清涼飲料研究会 第33回研究発表会 受賞者のご紹介 | インフォメーション・ご案内 | 全国清涼飲料連合会

日本清涼飲料研究会 第33回研究発表会 受賞者のご紹介

日本清涼飲料研究会は10月8日に日本教育会館にて「第33回研究発表会」を開催しました。
研究発表会では、授賞式を行い、昨年発表された研究発表課題から選考の結果、下記3題がそれぞれ賞を受賞しました。
来年度以降も開催しますので、ぜひ当研究会会員の加入も含めて発表をご検討ください。

日本清涼飲料研究会賞

「茶粕(廃棄物)を茶殻(有価物)へ アップサイクルの取り組み」

株式会社伊藤園 佐藤 崇紀 氏

受賞理由

本件は、飲料工場で大量に排出される茶殻を廃棄せずに創意工夫することによって、アップサイクル商品へと生まれ変わらせた事例です。本件では、特に単純に有効利用しただけでなく、茶が持っている特性を活かすことで新たな価値を生み出していることを高く評価しました。また、新規投資を行わず既存・遊休設備を利用していること、多数の商品化実績があることも高く評価しました。このような高付加価値でかつ多様な資源の有効利用は、今後の資源循環を考える上で大変参考になるものです。

インタビュー

○今回の受賞研究で工夫された点や苦労された点を教えてください。
佐藤:
茶殻は多くの水分を含んでいて温度が高いため、腐敗しやすい問題点があります。それら腐敗しやすい茶殻を有効利用するためには乾燥工程が必要と考えられてきました。しかし、乾燥には多くの燃料(化石燃料等)の消費や二酸化炭素の発生が伴います。また、茶殻を有効利用するうえで新規設備を導入するとコスト面で持続不可能なプロセスになる場合があります。このように幾重ものハードルがある技術課題をひとつひとつ解決することに苦労しました。また、茶殻を単にリサイクルするのではなく(カスケード利用するのではなく)、茶の機能性を持った工業製品(建材・樹脂・紙など)にアップサイクルすることも苦労しました。

○今回の受賞研究が今後清涼飲料業界に与える影響や期待される効果を教えてください。
佐藤:
茶殻は古来より畳の掃除に利用するなど馴染み深い素材でした。しかし、大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される現代の経済社会において、茶殻も廃棄物として扱われるようになり、“茶粕”と呼ばれるようになりました。今回受賞した「消費者に馴染み深い茶殻を身近な工業製品にアップサイクルする研究」により、「茶粕(廃棄物)」ではなく「茶殻=有価物」という考え方が清涼飲料業界や消費者の皆様に定着することを期待します。さらに、清涼飲料業界のみならず様々な業界で「廃棄物=資源(有価物)」という考え方に変化することを期待しています。

全国清涼飲料連合会賞

「機器分析による玉露の品質判別」

福岡農林事務所 福岡普及指導センター 池田 浩暢 氏

受賞理由

本研究は、これまで専門家の主観的評価によってのみ実施されていた玉露の品質評価について、内容成分及び外観色を機器分析することによって、客観的指標を用いてその品質評価を再現したものです。本研究で得られた結果は品質の判定的中率が非常に高く、官能評価を再現した品質判別システムとして非常に高く評価できます。また、今回開発された評価システムを用いることで、品質の基準が明確になるとともに、より高品質な茶葉の生産にも大きく貢献することが予想されます。今後、データを蓄積することでより精度が上がり、様々な分野にも展開されることを期待します。

インタビュー

○今回の受賞研究で工夫された点や苦労された点を教えてください。
池田:
工夫した点は、どの機器を用いてどのような分析結果を得れば、人間の官能評価に近い結果を得ることができるかです。また、どのような方法で前処理、分析および測定をすれば、分析者の違いが出にくい普遍的な結果が得られるかを検討したことです。
苦労した点は、いかに良質で規則性のあるサンプルを毎年同じ条件で収集・保存し、どれだけ多くのサンプルを分析できるかです。また、機器分析によって得られたデータをどのような方法で統計処理すれば、人間の官能評価を予測できるかを検討したことです。

○今回の受賞研究が今後清涼飲料業界に与える影響や期待される効果を教えてください。
池田:
これまで茶の品質(おいしさ)は水質などの環境要因や人間の達観評価に左右されることがありましたが、今回の研究によって客観的に評価できることが明らかになりました。また、その品質差がどのような要因から発生しているのかを統計的に解明することができました。さらに、今回の研究を活用することで、高品質な茶を効果的に栽培することが可能となるだけでなく、その品質を保証することで他産地との差別化が明確となり、ブランド化が期待できます。加えて、今回の研究手法は品質だけでなく、品種、栽培地および被覆条件など茶に関する様々な違いに関しても判別することができるため、偽装防止という観点からもブランド化に貢献できると考えられます。

日本清涼飲料研究会奨励賞

「香気成分の揮散挙動に基づくマスキング成分の探索方法」

高田香料株式会社 中本 幸志 氏

受賞理由

清涼飲料分野においてオフフレーバーのマスキングは大変重要な課題であり、永遠の課題と言っても過言ではないテーマです。本研究は独自の技術で口中における香気成分の余韻パターンを可視化することにより、類似性の高いマスキング成分を効率的に選定し、オフフレーバーのみをピンポイントに抑制する技術を提供するものです。本技術は新規性も高く、様々な飲料への応用も期待できることから、清涼飲料水の振興に大きく寄与する技術であると考えられます。今後、さらなる発展を期待します。

インタビュー

○今回の受賞研究で工夫された点や苦労された点を教えてください。
中本:
<工夫した点>
オフフレーバー成分のマスキングには、その成分と類似した揮散挙動を示す香気成分が有効であると考えられてきました。しかし、膨大な数の香気成分について、その挙動を個別に測定することは現実的ではありません。そこで本研究では、香気成分の分子記述子情報から揮散挙動を予測するモデルを開発し、効率的なマスキング候補成分の探索に繋げました。

<苦労した点>
より精度の高い予測モデルを構築するために、香気成分が持つ多数の情報の中から何が最適なのか、その選択に苦労しました。

○今回の受賞研究が今後清涼飲料業界に与える影響や期待される効果を教えてください。
中本:
<期待される効果>
この技術を用いて開発したマスキング香料は、揮散挙動が類似した成分を使用しているため、オフフレーバーに対するマスキング効果が持続します。

<飲料業界への影響>
従来の強い香料による被覆とは異なり、繊細な風味を損なうことなく、オフフレーバーを効果的に抑制します。そのため、飲料本来の美味しさを活かした製品開発に大きく貢献できると期待されます。